activities
議会活動


令和5年(2023年)6月定例会
◆(くずや利枝君)
このたび名東区より初当選をさせていただきましたくずや利枝でございます。よろしくお願いを申し上げます。
議長よりお許しをいただきましたので、通告に従い、順次質問をさせていただきます。
まず初めに、トワイライトスクール・ルームにおける体験活動の充実について質問をいたします。
本市のトワイライトスクールまたはトワイライトルーム、いわゆるトワイライトでは、コロナ禍においても、子供たちの放課後の居場所を確保するため、地域の方々の御協力もいただきながら、様々な活動を実施してきました。
その中でも、地域の方々に講師となっていただき、和太鼓や琴などの伝統的な活動、茶道や華道などの文化的な活動、お手玉やおはじきなどの伝承遊びといった、各家庭で保護者だけでは教えることが難しいような活動も含めて様々な体験活動があり、子供たちも楽しんで参加していると聞いています。
ここ数年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、感染症対策を講じながらの運営ということで、実施回数が制限されてきました。小学校1校当たりの月間の平均的な実施回数を比較すると、コロナ前である令和元年度は一月に10.4回実施されていましたが、直近の令和4年度は6.7回と減少しています。
また、子供の体験活動の状況については、民間団体の調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、非正規雇用労働者の世帯など所得が大きく減少した世帯のうち約半数が、子供の学びに関する困り事として、子供の体験機会の減少を挙げています。
子供の体験活動の減少は、子供の学習意欲の低下につながるといった調査結果もあります。コロナ禍における様々な制限により、学校授業での体験機会は、経済状況にかかわらず全ての子供たちにおいて減少していますが、低所得世帯の子供たちは、学校授業で失った体験機会を学校以外の場で補填するだけの経済的余裕が少ないという状況があります。
こうした家庭間における体験機会の格差が生じている中で、経済状況にかかわらず、全ての子供たちがトワイライトを通じて体験活動の機会を受けられる環境整備が、これまで以上に求められていると考えます。
このような状況の中で、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に移行し、社会経済活動が徐々に再開されていく中で、トワイライトにおける体験活動の実施頻度を含めて、コロナ前の水準まで回復し、充実を図っていくことが必要であると考えます。
一方で、こうした体験活動の講師を担っていただく地域のボランティアの方々も、伝統的、文化的な活動の講師を中心に高齢化が進み、担い手不足が課題となっていると聞いています。小学生の子供がいる保護者からも、実際に担い手不足が原因で、学校によってはトワイライトの活動内容にばらつきがあるといった声を聞くことが少なくありません。
このような状況も踏まえて、今後は地域のボランティアの方々のみに頼るのではなく、地域の民間事業者等とも連携を強化し、御協力をいただくことで、各学校での体験活動をより充実することができるのではないかと考えます。
そこで、子ども青少年局長にお伺いいたします。現在でも、トワイライトの各運営事業者により、でらスポ名古屋加盟チームによるふれあいサッカーひろばやキッズ野球教室など、民間事業者の協力を得て様々な活動を実施されているようですが、各運営事業者で実施している体験活動では内容に限りがあるため、多様な民間事業者と関わりのある子ども青少年局が積極的にトワイライトに協力していただける民間事業者を開拓し、連携を図ることで、各学校における体験活動の充実につながると考えますが、当局としてのお考えをお尋ねいたします。
次に、美術館における子供の利用者増加に向けた取組について質問をいたします。
昨今の教育現場では、AIやIoTなど急速な技術の進展により、社会が速いスピードで変化し、多様な課題が生じている中で、これまでの文系、理系といった枠にとらわれず、各教科の学びを基盤として様々な情報を活用しながら、課題の発見・解決、社会的な価値の創造に結びつけていく資質・能力の育成が求められています。
これまで国際的にもサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティクス、この英語のS、T、E、Mの頭文字を取ったSTEM教育が新しい教育理念として進められています。
これに関連して、国においても、令和2年度から初等教育においてプログラミング教育を必修化する方針が文部科学省から発表され、小学校でのプログラミング教育の必修化やGIGAスクール構想に基づくタブレット等のICTを活用した教育を進めることとし、本市の小学校においても取組が進められています。
そして、最近では、このSTEM教育にアート--芸術、リベラルアーツを加え、英語のS、T、E、A、Mの頭文字を取ったSTEAM教育が国際的に広がりを見せています。具体的には、数学や科学の基礎知識を習得した上で、技術や工学を応用し、芸術的な感性を生かし創造的な手法を活用して問題解決につなげる能力を総合的に学習することを目的としており、文部科学省においても教科横断的な学習を推進しています。
さらに、このSTEAM教育の土台としては、幼児期からの様々な体験の充実、小学校・中学校での教科横断的な学習や探究的な学習の充実が重要であり、発達の段階に応じて、児童生徒の興味を生かし、教員が一人一人に応じた学習活動を課すことで、児童生徒自身が主体的に学習テーマや探究方法を設定することが重要であるとしています。
そこで、幼少期から小学校、中学校の義務教育において、子供の芸術的な感性や創造性を育む観点で、名古屋市美術館の活用について、教育長にお伺いをいたします。
名古屋市美術館は、教育委員会が所管する教育施設として、これまでも、美術館での学習プログラムとして市内の小中学校を受け入れるほか、出前アート体験として学芸員が小中学校に出向く学習プログラムを実施してきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、コロナ前と比較すると、美術館を訪れる小中学校の件数は減少していると聞いています。
また、美術館は中学生以下の入館料を無料としていますが、直近の令和3年度の入館者数は25万人余り、また、中学生以下の入館者の割合は全体の7%であり、極めて少ない状況と言えます。
一方で、美術館と同じく白川公園の敷地内に立地し、教育委員会が所管する名古屋市科学館の令和3年度の入館者数は77万人余りであり、これは美術館の約3倍の入館者数であるほか、中学生以下の入館者の割合は全体の40%であり、科学館を訪れることはあっても美術館は訪れたことがない中学生以下の子供が多い現状がうかがえます。
もっとも、双方の施設の目的と性質が異なるため一様に比較はできませんが、美術館を訪れる中学生以下の利用者がもう少し増える余地はあるのではないか、中学生以下の子供たちに美術、芸術に親しみを持ってもらう、関心を持ってもらう取組に対する工夫が必要ではないかと考えます。
そこで、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に移行し、今後、学校においても様々な活動が活発化していく中で、中学生以下の子供の利用促進に向けて、小中学校との連携をこれまで以上に推進していく必要性について、お考えをお尋ねいたしまして、私からの1回目の質問を終わります。(拍手)
◎子ども青少年局長(佐藤誠司君)
子ども青少年局には、トワイライトスクール・ルームにおける体験活動の充実についてお尋ねをいただきました。
本市のトワイライトは、放課後等に学校施設を活用して、異なる学年の子供たちが、友達と自由に遊んだり、学んだり、体験活動に参加したり、世代の異なる地域の方々と交流したりすることを通して、子供たちの自主性、社会性、創造性などを育むことを目的として実施しております。
トワイライトの体験活動につきましては、地域ボランティアの方々の御協力を中心として、様々な活動を実施しております。令和4年度に実施したアンケート調査では、利用児童の7割の子供たちから、楽しい講座があるとの回答があり、一定の評価はいただいているものの、残りの3割の子供たちは満足していないといった回答をしており、体験活動の充実は、当局といたしましても重要な課題として認識をしているところでございます。
議員御指摘のとおり、地域ボランティアの方々のみでなく、民間事業者の協力を得て、トワイライトの体験活動の充実を図っていくことは大変有意義なことと考えております。
昨年度、経済局が実施する起業家育成事業を5校で試行実施したところ、参加した子供たちからも大変好評であったため、今年度は実施校の拡充をいたします。また、新たに公民連携の一環として、民間事業者による防災講座も予定をいたしております。
こうした取組はまだまだ限定的ですので、子ども青少年局といたしましても、御協力いただける民間事業者の確保に努め、それぞれの事業者ならではのアイデアで子供たちが興味・関心を持って取り組める活動を実施する等、今後もより一層体験活動の充実を図ってまいります。
以上でございます。
◎教育長(坪田知広君) 教育委員会には、美術館における子供の利用者増加に向けた取組についてお尋ねをいただきました。
美術館におきましては、学校に呼びかけを行い、校外学習や職場体験として児童生徒を受け入れるとともに、学芸員が学校に出向いてタブレット端末を活用した美術鑑賞授業を行う出前アート体験を実施しております。
また、このような取組の充実に向け、新たに教員のための無料美術館体験を開始いたします。まずは、気軽に市立学校の教員が美術館を訪れ、美術館の魅力を体感してもらうとともに、学校現場の多様な意見やニーズを把握いたします。その上で、新たなプログラムを企画するなど、小中学校との連携を推進してまいります。
以上でございます。
◆(くずや利枝君)
それぞれに御答弁をいただきました。ありがとうございます。
初めに、トワイライトにおける体験活動の充実について、私から意見を述べさせていただきます。
子供の体験活動は、子供の学習意欲や主体性などの社会性スキルにも影響をもたらすと言われており、文部科学省でも重要な教育政策として推進されています。
また、子供の体験活動に関する民間団体の調査では、スポーツや音楽などの習い事、自然体験や文化体験への子供の参加状況について、年収300万円未満の世帯の子供の約3人に1人は経済的理由により学校授業以外の体験機会が何もなく、年収600万円以上の世帯と比較すると、約2.6倍の差が生じているといった調査結果も出ています。
家庭の経済状況にかかわらず、全ての子供に対する体験活動の機会の一つとしてトワイライトの役割に期待するとともに、トワイライトの満足度向上のためにも、さらなる体験活動の充実が必要と考えますので、民間事業者との連携強化を含めて、今まで以上の取組を進めていただきますよう、重ねて要望を申し上げまして、本件に対する質問を終わります。
次に、美術館における子供の利用者増加に関して、新たに教員に対する取組を含めて前向きな御答弁をいただきましたが、未就学児に対する取組についても、教育長に再度お尋ねをいたします。
他都市の美術館の取組を見てみますと、横浜美術館では、教育プログラムとして、市内の幼稚園、保育園、小学校、特別支援学校と連携した取組を行っています。
ほかにも、岡山県倉敷市の大原美術館では、未就学児童対象プログラムとして、市内の幼稚園、保育園を対象に、一人の園児が複数回美術館を訪れて絵画鑑賞や美術探検を楽しむといった取組が行われています。大原美術館のこの取組は、1993年から始められ現在まで30年継続していることから、初期の子供たちは社会人となり、再び美術館を訪れる姿が見られるそうです。
このように、幼稚園、保育園も含めた子供向けプログラムを充実することは、芸術、美術に親しむ機会の提供により、教育面や人格形成に影響を与えるとともに、美術館へ足を運ぶことで、将来的なリピーターになるきっかけにつながるものと考えます。
そこで、小中学校との連携以外にも、未就学児やその保護者を含めた家族みんなで楽しく美術に触れる、親しむことができるような取組など、広く子供を対象とした利用促進への取組に対するお考えをお尋ねいたしまして、私からの2回目の質問とさせていただきます。
◎教育長(坪田知広君)
教育委員会には、美術館における子供の利用者増加に向けた取組に係る小中学校との連携以外での取組について、再度お尋ねをいただきました。
小中学校との連携以外では、子供と現役作家などが共に作品をつくるワークショップや、保護者が周囲に気兼ねすることなく未就学児と一緒に美術鑑賞を楽しめるベビーカーツアーなどの取組を実施してまいります。
また、新たな取組として、家族で気軽に訪れることができるような展覧会の開催を検討することで、子供たちやその家族の来館につなげてまいります。
美術館は今年で開館35周年の節目の年を迎えました。時代の変化とともに変わる学校現場や市民生活の状況に呼応しながら、子供たちに将来の美術館のリピーターになってもらえるような魅力あふれる美術館となるように取組を進めてまいります。
以上でございます。
◆(くずや利枝君)
未就学児を対象とした取組について、前向きな御答弁をいただきました。ありがとうございます。
社会の価値観が多様化し、従来の知識の詰め込みではなく、創造性を身につけていくことが今の子供たちには求められています。そのような中で、今まで以上に、幼少期からの子供たちの感性を養うような教育面での役割を教育委員会の所管である美術館に期待するとともに、開館35周年の節目に合わせて、ぜひ従来にない新たな取組を前向きに進めていただきますよう、重ねて要望を申し上げまして、私の全ての質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)